12/04/2015

№54 年収は、いくら欲しいですか

 首都圏在住の30歳独身男性会社員に、楽天が調査した際の理想の年収が、興味深いです。30歳で916万円、40歳で1,119万円だそうです。首都圏は、家賃が高いので、この位ないと生活が苦しいということだと思います。

 実際には、国税庁の調査によれば、平均年収は、30-34歳で男性446万円、女性301万円、40-44歳で男性564万円、女性290万円です。(平成26年 民間給与実態統計調査)

 問題はこのギャップを埋めるために、何か取り組んでいるかです。社内で昇進して、収入を上げるのが日本では一般的ですが、欧米では、転職により収入を上げます。また欧米では、副業を持つ人は少なくないですが、日本ではタブーのように扱われます。

 日本では、永らく終身雇用が一般的でした。しかし、多くの企業が国際競争にさらされ、合併や業績不振によるリストラも増えてきました。会社にとってみれば副業がある社員の方が、切りやすいですし、副業があれば、失業による収入減も限定的です。

 また、男女の賃金格差が高いのも気になるところです。高収入の男性と結婚できれば良いですが、現実的には、大半の女性は失敗します。30歳で年収1,000万円以上の男性は、わずか1.5%しかいません。

 30歳までに結婚して、マイホームを持つという高度成長モデルは、もはや幻想でしかありません。共働きが一般的になるにつれ、収入の低い女性は、男性にとってリスクが高いので、選択されにくくなります。さて、あなたは、いくら年収が欲しいですか?
(下表は、国税庁調査)

11/05/2015

№53 なぜ起業準備すべきなのか

   日本の景気は、今年の4月以降停滞しているようです。中国人観光客の「爆買い」、失業者の64カ月連続減少、というニュースを聞くと、ちょっと不思議な気がします。
   私の本業は、経営コンサルティングですが、コンサルティング業界では人手不足です。大手コンサルティング会社などは、未経験者をにわかコンサルタントに仕立てて、顧客企業に送り込んでいる状況です。
   コンサルタントを使う企業は、経営に余力があるうちに、人口減少を前提にした業務改善をスタートしています。少数精鋭の正社員を残し、足りない作業は、契約社員、派遣社員、アルバイトでも回せる態勢にするのです。今、正社員だといっても実は安泰ではないのです。
   かつては給料の高い40代、50代がリストラの対象になりましたが、そのために日本のメーカーは、技術の流出を招きました。グローバル企業ではノウハウや経験の少ない若手からリストラするのが常識です。サラリーマンは、勤めている会社で頑張るだけでは、危ないです。
 
   固定費である正社員の給料を減らして、変動費化することで、企業はリスクを減らしています。しかし、この改善活動が進むと、景気が悪くなると、一斉に解雇が進み失業者が続出します。
   オリンピックの翌年は、開催国では例外なく景気が悪くなるため、外国人投資家は、日本脱出を図っているようです。また、日本人でも、高額所得者は、住居や納税地を海外に移してリスクを減らしているようです。定期的な給料をもらっているうちに、起業の準備をするなど、景気悪化に備えるべきです。
(画像は、総務省統計局)

6/30/2015

№52 一時的円高とギリシャ問題

ギリシャ情勢により、一時的に円高になっています。ギリシャが債務不履行(デフォルト)状態になることで、貸し手のEU諸国が打撃を受ける。その思惑で、EUの通貨EUROから、比較的安全な円に資金を避難させる動きがあります。
実は、もう少し深読みをすると、今回ギリシャに強硬に改革を迫っているのはドイツです。ドイツとしては、ギリシャ危機でEUROが安くなると、輸出がしやすくなります。ドイツ銀行などの金融機関が大打撃を受けても、影響は限定的だと考えているかも知れません。
同じく財政状態の悪いイタリア、スペインもデフォルトになると、世界経済にも大きな影響が出るでしょう。さて、同じく毎年収支がマイナス40兆円と財政が最悪な日本はどうでしょうか。国の借金残高は1,000兆円を越えています。
日本の場合、ギリシャなどに比べると、国債の格付けが高いので、低い金利で国債を引き受けてもらえます。しかし、じりじりと日本の格付けは下がり、ムーディーズ、S&P、フィッチいずれも、昨年から今年にかけて上から5番目へと1段階引き下げています。日本国民の金融資産があるうちは良いですが、先行きは不透明です。

6/23/2015

№51 海外投資のリスク

海外投資のリスクというと、為替や、格付けによる安全リスクが一般的です。しかしながら、世界経済が巨大化し、リスク要因も複雑化してきました。

まず、地勢学的リスクがあります。例えば、米中が戦争状態になったとき、日本列島は、中国に対する防波堤として戦場になる可能性があります。北朝鮮が崩壊すると、大量の難民が漂着するでしょう。

次に不確実性のリスクです。経済の規模が小さかった戦前ならば、恐慌から回復する可能性がありますが、現在の巨大な経済は、要素の組み合わせが多すぎて、人知をもって予測できません。10年以内に人工知能が解決するかも知れませんが、そのときは、開発一番乗りが一人勝ちして、残りは貧困層に脱落します。

つまり、極端な状態が起きる可能性があります。すでに時代遅れな、マルクス共産主義による分配が復活し、北朝鮮のように鎖国をする国が増えるかも知れません。21世紀以降のスーパーパワー、中国とインドの選択に世界の未来がかかっているかも知れません。

6/01/2015

№50 日本経済は大丈夫か

日本と同様に経済が低迷しているユーロ圏では、国の家計に当たる財政に、厳格なルールがあります。ユーロ圏では、ギリシャなど財政破綻した国を、他の加盟国が助ける必要があるため、落伍する国を作りたくないのです。

ユーロ圏では、財政赤字はGDPの3%、累積赤字は、GDPの60%を超えると是正勧告を受けます。日本の場合、2014年の財政赤字はGDP比、6.6%、債務残高は、233.8%です。EUの基準では、日本は財政破綻国家です。

では、なぜ日本はギリシャのように、経済が崩壊していないのか。それは、ギリシャと異なり、日本は借金し放題の国だからです。債務の残高は、1,000兆円を超えていますが、日本国民の金融資産は、株高の影響もあり、1,700兆円を超えています。これはアメリカに次いで世界第2位の規模です。

日本国民の資産が大きいので、日本円の信用性が高いのです。乱暴な論理ですが、いざというときには、国民の資産で国の借金を帳消しにできる訳です。遠くない過去に日本は、国民の金融資産を消滅させた実績があります。1948年に新円切り替えにより、現在の価値で、1人当たり100万円を超える金融資産は、消滅させられました。

2020年以降、急激に悪化する日本経済。ハードランディングが避けられない場合、最悪の事態も視野に入れておいた方が良いかも知れません。日本人は近い未来は悲観的、遠い未来には楽観的ですが、その時になってから慌てても、遅いことは歴史が物語っています。

5/28/2015

№49 円安が第二段階に突入

しばらく安定していた為替レートが、円安に動き始めました。1ドル124円台は、2002年以来、14年ぶりの円安水準です。アベノミクスの影響もあり、1ドル80円台から、120円で最近は比較的安定していました。それが急落したのは、アメリカ経済の見通しが明るく、日本経済のそれは暗いからです。
  
日本円で稼ぎ、日本円で消費するほとんどの日本人は、あまり気にもならないでしょう。しかし、対ドルで考えれば不動産や円建て預金など国民の資産はこの3年で3割も目減りしたのです。給料も3割安ですから、もはや海外旅行で免税店に行っても買卯気が起きません。

一方、日本に来る旅行客にとってみれば、全てが安く、中国人による、いわゆる爆買いが起きるのは、必然です。東京都心のタワーマンションも、中国人に人気で、物件によっては、半分が中国人に買われたものもあるようです。

外国人による消費や投資は有り難いものですが、買われているうちは良いですが、売られ始めると、暴落が怖いです。2020年の東京オリンピック以降、投資が激減するため、来年以降、外国人投資家は売り抜けを開始します。

さらなる円安も日本売りを加速化します。1986年のプラザ合意で円高がスタートした1ドル160円程度までは、覚悟した方が良いかも知れません。このまま、資産や収入の価値が半減しても我慢しますか。それとも何かアクションをとりますか。(円ドルチャートは、ロイター)

5/06/2015

№48 仕事を選べる国、選べない国

   日本ではTPPを受け入れると、農業が壊滅すると、ニュースになっています。実はTPPに関わらず、日本では農業は衰退気味です。理由は、後継者不足です。両親が農家でも、子供は農業をやりたがらないのです。

  農業をやりたくても、できない事情もあります。日本の農業は、秋田県の大潟村、長野県の川上村や北海道の十勝地方等をのぞくと、生産性が低くて、収入が低いのです。ですから副業で収入の低さを補います。農家は163万戸ありますが、そのうち副業を持つ兼業農家が118万戸です。

  日本の高度成長時代は、道路などのインフラ投資が多かったので、建設業が農家の主な副業になりました。しかし、国の財政難で地方の仕事が減っているので、兼業農家が成り立たない。それが農家の後継者不足の要因の1つです。

  元々、明治時代に日本で産業革命が起こるまで、日本人の大半は農民でした。江戸時代の日本の人口は、約3,000万人ですが、その8割以上が、農民です。それは、他に仕事がなかったからです。産業の発展とともに、製造業、サービス業に雇用がシフトするのが一般的です。逆にいえば、仕事を選択できるようになるのです。

   一方、発展途上国では、仕事の種類が限られているので、農業に留まる人が多いのです。インドネシアやフィリピンでも、農業従事者は、3割以上います。農村ではそれ以外に仕事がなく、仕事が選べないのです。都市に出てきても、住居コストが高いし、学歴やコネがないと就職できなかったりです。しかし、人口が急増する途上国では、いずれは製造業が発展し、消費の中心になる中間所得層が急増はずです。(下表は、日本の農業就業者推移、出所は総務省統計局)