6/23/2015

№51 海外投資のリスク

海外投資のリスクというと、為替や、格付けによる安全リスクが一般的です。しかしながら、世界経済が巨大化し、リスク要因も複雑化してきました。

まず、地勢学的リスクがあります。例えば、米中が戦争状態になったとき、日本列島は、中国に対する防波堤として戦場になる可能性があります。北朝鮮が崩壊すると、大量の難民が漂着するでしょう。

次に不確実性のリスクです。経済の規模が小さかった戦前ならば、恐慌から回復する可能性がありますが、現在の巨大な経済は、要素の組み合わせが多すぎて、人知をもって予測できません。10年以内に人工知能が解決するかも知れませんが、そのときは、開発一番乗りが一人勝ちして、残りは貧困層に脱落します。

つまり、極端な状態が起きる可能性があります。すでに時代遅れな、マルクス共産主義による分配が復活し、北朝鮮のように鎖国をする国が増えるかも知れません。21世紀以降のスーパーパワー、中国とインドの選択に世界の未来がかかっているかも知れません。

6/01/2015

№50 日本経済は大丈夫か

日本と同様に経済が低迷しているユーロ圏では、国の家計に当たる財政に、厳格なルールがあります。ユーロ圏では、ギリシャなど財政破綻した国を、他の加盟国が助ける必要があるため、落伍する国を作りたくないのです。

ユーロ圏では、財政赤字はGDPの3%、累積赤字は、GDPの60%を超えると是正勧告を受けます。日本の場合、2014年の財政赤字はGDP比、6.6%、債務残高は、233.8%です。EUの基準では、日本は財政破綻国家です。

では、なぜ日本はギリシャのように、経済が崩壊していないのか。それは、ギリシャと異なり、日本は借金し放題の国だからです。債務の残高は、1,000兆円を超えていますが、日本国民の金融資産は、株高の影響もあり、1,700兆円を超えています。これはアメリカに次いで世界第2位の規模です。

日本国民の資産が大きいので、日本円の信用性が高いのです。乱暴な論理ですが、いざというときには、国民の資産で国の借金を帳消しにできる訳です。遠くない過去に日本は、国民の金融資産を消滅させた実績があります。1948年に新円切り替えにより、現在の価値で、1人当たり100万円を超える金融資産は、消滅させられました。

2020年以降、急激に悪化する日本経済。ハードランディングが避けられない場合、最悪の事態も視野に入れておいた方が良いかも知れません。日本人は近い未来は悲観的、遠い未来には楽観的ですが、その時になってから慌てても、遅いことは歴史が物語っています。

5/28/2015

№49 円安が第二段階に突入

しばらく安定していた為替レートが、円安に動き始めました。1ドル124円台は、2002年以来、14年ぶりの円安水準です。アベノミクスの影響もあり、1ドル80円台から、120円で最近は比較的安定していました。それが急落したのは、アメリカ経済の見通しが明るく、日本経済のそれは暗いからです。
  
日本円で稼ぎ、日本円で消費するほとんどの日本人は、あまり気にもならないでしょう。しかし、対ドルで考えれば不動産や円建て預金など国民の資産はこの3年で3割も目減りしたのです。給料も3割安ですから、もはや海外旅行で免税店に行っても買卯気が起きません。

一方、日本に来る旅行客にとってみれば、全てが安く、中国人による、いわゆる爆買いが起きるのは、必然です。東京都心のタワーマンションも、中国人に人気で、物件によっては、半分が中国人に買われたものもあるようです。

外国人による消費や投資は有り難いものですが、買われているうちは良いですが、売られ始めると、暴落が怖いです。2020年の東京オリンピック以降、投資が激減するため、来年以降、外国人投資家は売り抜けを開始します。

さらなる円安も日本売りを加速化します。1986年のプラザ合意で円高がスタートした1ドル160円程度までは、覚悟した方が良いかも知れません。このまま、資産や収入の価値が半減しても我慢しますか。それとも何かアクションをとりますか。(円ドルチャートは、ロイター)

5/06/2015

№48 仕事を選べる国、選べない国

   日本ではTPPを受け入れると、農業が壊滅すると、ニュースになっています。実はTPPに関わらず、日本では農業は衰退気味です。理由は、後継者不足です。両親が農家でも、子供は農業をやりたがらないのです。

  農業をやりたくても、できない事情もあります。日本の農業は、秋田県の大潟村、長野県の川上村や北海道の十勝地方等をのぞくと、生産性が低くて、収入が低いのです。ですから副業で収入の低さを補います。農家は163万戸ありますが、そのうち副業を持つ兼業農家が118万戸です。

  日本の高度成長時代は、道路などのインフラ投資が多かったので、建設業が農家の主な副業になりました。しかし、国の財政難で地方の仕事が減っているので、兼業農家が成り立たない。それが農家の後継者不足の要因の1つです。

  元々、明治時代に日本で産業革命が起こるまで、日本人の大半は農民でした。江戸時代の日本の人口は、約3,000万人ですが、その8割以上が、農民です。それは、他に仕事がなかったからです。産業の発展とともに、製造業、サービス業に雇用がシフトするのが一般的です。逆にいえば、仕事を選択できるようになるのです。

   一方、発展途上国では、仕事の種類が限られているので、農業に留まる人が多いのです。インドネシアやフィリピンでも、農業従事者は、3割以上います。農村ではそれ以外に仕事がなく、仕事が選べないのです。都市に出てきても、住居コストが高いし、学歴やコネがないと就職できなかったりです。しかし、人口が急増する途上国では、いずれは製造業が発展し、消費の中心になる中間所得層が急増はずです。(下表は、日本の農業就業者推移、出所は総務省統計局)

4/24/2015

№47 円安で製造業は戻って来ますか

昨年末に、アップルが、横浜市に研究開発拠点を置くという話がメディアで話題になりました。日本国内で新たに雇用を生むという訳ですから、手放しで大歓迎です。

一方、日本国内にあった工場は、人件費の低い中国や東南アジアに移転して、国内の雇用が大幅に減りました。余った人員は、配置転換で異なる仕事に回されるか、サービス業に転職を余儀なくされました。

さて、昨今の円安で、日本国内の人件費コストは海外からみると低減しています。それで工場をもう一度呼び戻せるかというと、残念ながら見込みは薄いです。部品や加工品の工場を含むサプライチェーンが海外に移転してしまったからです。

さらに、生産人口が減少している日本国内では、工場が戻ってきても働き手を探すのは、容易ではありません。円安で割安感のある、優秀な技術者は、より稼ぐチャンスが増えても、分厚いミドルクラス向けの仕事は残念ながら戻って来ないのです。(下記記事はロイター)

4/07/2015

№46 投資とリスク

投資とリスクについては、残念ながら義務教育で習うことが少ないです。すべての国民が投資とリスクに関わっているにもかかわらずです。例えば、安全といわれる円建て銀行預金も、リスクはゼロではありません。日本という国が、破綻しない保証はないからです。

老後のセーフティネットの1つの年金原資が、最近になって株式市場に投入されているのは、国がリスクをとって高いリターンを得ようとしているからです。なぜなら、高いリターンがなければ、年金システムが近い将来破綻するからです。但し、株式が値下がりすれば、やはり破綻は免れません。

一部の年金には、個人でリスクをとる仕組みが導入されています。401Kとよばれる、確定拠出型年金です。各自が、債券、株式などの組み合わせを選んで、高いリターンを得られる可能性がある反面、国は年金額を保証するリスクを一部放棄したのです。

リスクが高い金融商品には、高いリターンが設定されます。ベンチャー企業に投資して、大半は損するものの、当たれば高いリターンが得られます。宝くじのほとんどが、ハズレですが、当たれば高いリターンが得られます。

アジアなどの新興国での投資には、タイ、バングラデシュなどの政治的不安定さ、中国、ベトナムなどの情報開示不足、パキスタンなどのテロや戦争などのリスクは伴います。しかし、それを加味しても魅力的なリターンが期待できます。それは、人口が増加する国では消費が増加し、経済規模が増加することが確実だからです。(図は、厚生労働省ウェブサイト)

4/04/2015

№45 日本、日本人と相性が良い国

海外ビジネスでは、単純にマーケットの状況だけで判断するのは早計です。ビジネスは、人間がからむので、やはり相性が大切です。日本は、アジアでも占領された経験が極めて短い、特異な国です。ですから占領される側の気持ちが分かりません。中国、韓国に嫌われるのは、仕方ない部分もあります。

しかし同様に軍国日本に被害を被ったアジア諸国は、例外なく親日です。なぜなら、中国、韓国と違って、日本がライバルだと思っていないからです。中国は、「中華思想」という世界の中心は、中国だと考えています。韓国も世界の中心国家としての自負があります。

アジア諸国では、中国人、韓国人は、現地人を見下す傾向にあるので、現地人には嫌われがちです。かつての日本もその傾向がありましたが、失われた20年を経て、没落しつつある日本人は、良い意味でプライドがなくなり、アジア諸国と協調しやすい状況です。また、中国の経済的、軍事的な脅威が、親日の傾向を強めている可能性があります。

また日本人には、だますより、だまされた方が良いという美徳があります。日本人はある意味、アジア諸国にとっては気前の良いカモでもあります。何しろ1,600兆円の金融資産があります。長期的円安傾向とはいえ、貨幣価値があるうちに、トライアンドエラーで親日国の親日国民とビジネスをスタートしてみてはいかがでしょうか。
(下記の画像は、アウンコンサルティングによる調査)