5/28/2015

№49 円安が第二段階に突入

しばらく安定していた為替レートが、円安に動き始めました。1ドル124円台は、2002年以来、14年ぶりの円安水準です。アベノミクスの影響もあり、1ドル80円台から、120円で最近は比較的安定していました。それが急落したのは、アメリカ経済の見通しが明るく、日本経済のそれは暗いからです。
  
日本円で稼ぎ、日本円で消費するほとんどの日本人は、あまり気にもならないでしょう。しかし、対ドルで考えれば不動産や円建て預金など国民の資産はこの3年で3割も目減りしたのです。給料も3割安ですから、もはや海外旅行で免税店に行っても買卯気が起きません。

一方、日本に来る旅行客にとってみれば、全てが安く、中国人による、いわゆる爆買いが起きるのは、必然です。東京都心のタワーマンションも、中国人に人気で、物件によっては、半分が中国人に買われたものもあるようです。

外国人による消費や投資は有り難いものですが、買われているうちは良いですが、売られ始めると、暴落が怖いです。2020年の東京オリンピック以降、投資が激減するため、来年以降、外国人投資家は売り抜けを開始します。

さらなる円安も日本売りを加速化します。1986年のプラザ合意で円高がスタートした1ドル160円程度までは、覚悟した方が良いかも知れません。このまま、資産や収入の価値が半減しても我慢しますか。それとも何かアクションをとりますか。(円ドルチャートは、ロイター)

5/06/2015

№48 仕事を選べる国、選べない国

   日本ではTPPを受け入れると、農業が壊滅すると、ニュースになっています。実はTPPに関わらず、日本では農業は衰退気味です。理由は、後継者不足です。両親が農家でも、子供は農業をやりたがらないのです。

  農業をやりたくても、できない事情もあります。日本の農業は、秋田県の大潟村、長野県の川上村や北海道の十勝地方等をのぞくと、生産性が低くて、収入が低いのです。ですから副業で収入の低さを補います。農家は163万戸ありますが、そのうち副業を持つ兼業農家が118万戸です。

  日本の高度成長時代は、道路などのインフラ投資が多かったので、建設業が農家の主な副業になりました。しかし、国の財政難で地方の仕事が減っているので、兼業農家が成り立たない。それが農家の後継者不足の要因の1つです。

  元々、明治時代に日本で産業革命が起こるまで、日本人の大半は農民でした。江戸時代の日本の人口は、約3,000万人ですが、その8割以上が、農民です。それは、他に仕事がなかったからです。産業の発展とともに、製造業、サービス業に雇用がシフトするのが一般的です。逆にいえば、仕事を選択できるようになるのです。

   一方、発展途上国では、仕事の種類が限られているので、農業に留まる人が多いのです。インドネシアやフィリピンでも、農業従事者は、3割以上います。農村ではそれ以外に仕事がなく、仕事が選べないのです。都市に出てきても、住居コストが高いし、学歴やコネがないと就職できなかったりです。しかし、人口が急増する途上国では、いずれは製造業が発展し、消費の中心になる中間所得層が急増はずです。(下表は、日本の農業就業者推移、出所は総務省統計局)

4/24/2015

№47 円安で製造業は戻って来ますか

昨年末に、アップルが、横浜市に研究開発拠点を置くという話がメディアで話題になりました。日本国内で新たに雇用を生むという訳ですから、手放しで大歓迎です。

一方、日本国内にあった工場は、人件費の低い中国や東南アジアに移転して、国内の雇用が大幅に減りました。余った人員は、配置転換で異なる仕事に回されるか、サービス業に転職を余儀なくされました。

さて、昨今の円安で、日本国内の人件費コストは海外からみると低減しています。それで工場をもう一度呼び戻せるかというと、残念ながら見込みは薄いです。部品や加工品の工場を含むサプライチェーンが海外に移転してしまったからです。

さらに、生産人口が減少している日本国内では、工場が戻ってきても働き手を探すのは、容易ではありません。円安で割安感のある、優秀な技術者は、より稼ぐチャンスが増えても、分厚いミドルクラス向けの仕事は残念ながら戻って来ないのです。(下記記事はロイター)

4/07/2015

№46 投資とリスク

投資とリスクについては、残念ながら義務教育で習うことが少ないです。すべての国民が投資とリスクに関わっているにもかかわらずです。例えば、安全といわれる円建て銀行預金も、リスクはゼロではありません。日本という国が、破綻しない保証はないからです。

老後のセーフティネットの1つの年金原資が、最近になって株式市場に投入されているのは、国がリスクをとって高いリターンを得ようとしているからです。なぜなら、高いリターンがなければ、年金システムが近い将来破綻するからです。但し、株式が値下がりすれば、やはり破綻は免れません。

一部の年金には、個人でリスクをとる仕組みが導入されています。401Kとよばれる、確定拠出型年金です。各自が、債券、株式などの組み合わせを選んで、高いリターンを得られる可能性がある反面、国は年金額を保証するリスクを一部放棄したのです。

リスクが高い金融商品には、高いリターンが設定されます。ベンチャー企業に投資して、大半は損するものの、当たれば高いリターンが得られます。宝くじのほとんどが、ハズレですが、当たれば高いリターンが得られます。

アジアなどの新興国での投資には、タイ、バングラデシュなどの政治的不安定さ、中国、ベトナムなどの情報開示不足、パキスタンなどのテロや戦争などのリスクは伴います。しかし、それを加味しても魅力的なリターンが期待できます。それは、人口が増加する国では消費が増加し、経済規模が増加することが確実だからです。(図は、厚生労働省ウェブサイト)

4/04/2015

№45 日本、日本人と相性が良い国

海外ビジネスでは、単純にマーケットの状況だけで判断するのは早計です。ビジネスは、人間がからむので、やはり相性が大切です。日本は、アジアでも占領された経験が極めて短い、特異な国です。ですから占領される側の気持ちが分かりません。中国、韓国に嫌われるのは、仕方ない部分もあります。

しかし同様に軍国日本に被害を被ったアジア諸国は、例外なく親日です。なぜなら、中国、韓国と違って、日本がライバルだと思っていないからです。中国は、「中華思想」という世界の中心は、中国だと考えています。韓国も世界の中心国家としての自負があります。

アジア諸国では、中国人、韓国人は、現地人を見下す傾向にあるので、現地人には嫌われがちです。かつての日本もその傾向がありましたが、失われた20年を経て、没落しつつある日本人は、良い意味でプライドがなくなり、アジア諸国と協調しやすい状況です。また、中国の経済的、軍事的な脅威が、親日の傾向を強めている可能性があります。

また日本人には、だますより、だまされた方が良いという美徳があります。日本人はある意味、アジア諸国にとっては気前の良いカモでもあります。何しろ1,600兆円の金融資産があります。長期的円安傾向とはいえ、貨幣価値があるうちに、トライアンドエラーで親日国の親日国民とビジネスをスタートしてみてはいかがでしょうか。
(下記の画像は、アウンコンサルティングによる調査)

3/26/2015

№44 2055年までどうしのぎますか

日本は、世界でも60歳以上の高齢者が多い国です。2013年の国連の統計では、全人口の32%が60歳以上。2位のイタリアが26.9%、3位のドイツが26.8%ですから、日本がいかに突出しているか分かります。理由は明確で、昭和23年(1948年)頃に生まれた「団塊」の世代が多いからです。

また、1970年代生まれの団塊ジュニアも多いのですが、彼らは子供をあまり作らなかったため、「次世代の団塊」が発生せず、高齢化が加速したのです。したがって団塊ジュニアが寿命を迎えつつある2055年頃まで、日本経済の再成長は、若年層の移民を大量に受け入れない限り困難です。

その時点の日本人の平均年齢は52歳以上になります。誰が政治をコントロールしても動かしようがない未来です。2055年以降は、現在の日本人の平均年齢46歳前後に戻るので、現在のドイツ、オーストリア、スイスなどのように、国民1人当たりのGDPが高い国への復帰が見込めます。

そこで、それまでの年月をどうやってしのぐかが、日本人の課題です。世の中全員貧しくなるから、みんなで我慢しようという清貧の思想がもてはやされていますが、これは異常な事態です。特に、被害を被る若年層にとっては迷惑な話です。

今は高齢者の金融資産が1,000兆円以上あるので、それを相続できる幸運な人は痛みを緩和できるでしょう。問題は親に資産がない人達です。財政破綻によるハイパーインフレか、死ぬまで続く賃金減少に耐えなければならないのです。近未来については心配する日本人ですが、遠い将来については、そのときになってから考える異常に楽観的な国民性。あなたは、そのときまでおとなしく待ちますか。それとも何か行動しますか。

3/21/2015

№43 確実に伸びる消費財産業

日本では、2008年から継続して人口が減少しています。経済規模の指標となるGDP(国内総生産)は、大まかに消費、投資、貿易黒字(または赤字)を合計したものです。日本では、GDPの約7割が消費ですから、人口の減少は経済規模の縮小を意味します。

逆に高度成長時代の日本では、敗戦時の1945年に7,200万人だった人口が、ベビーブームで1955年には一気に9,000万人まで増えました。この年の日本人の平均年齢は28歳ですから、消費意欲も旺盛です。自動車、家電製品などの耐久消費財がどんどん売れました。

この時期、安定的かつ確実に売れる、食品、日用雑貨品業界に外資系企業が日本に参入し、大成功をおさめています。コカコーラ、P&G、ネスレ、ユニリーバなどです。不況にも強いため、投資が長期的にリターンに結び付いているのです。

さて、これから2050年に向かって人口が激増するのは、実は中国ではありません。現在に比べてインド、ブラジル、メキシコが1.5倍、インドネシア、フィリピンが1.7倍に増えます。こうした国では、消費財の流通に関われれば、勝ち組といえるでしょう。